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僕らを隔てる隙間はほんの数センチ。彼女が窓の鍵を掛けなければ、いつでも行き来が可能である。
「翔。いつまで窓に張り付いてる気よ。鍵締めるから早く出ていきなさい」
しかし、彼女は鍵を締めてしまうのである。鍵を解除してくれるのは、目覚まし時計の代わりとして僕に起こしてもらう時。即ち、夜彼女が寝る時だけである。こっちの方が危ないような気がするんだけど。
就寝以外は、一切無断出入り禁止。彼女の寝るのを邪魔する僕ではないので、学校から帰ったら殆ど話すことはない。寂しい話しだ。
五月十日。天気は晴れ。
「遅いなぁ」
春風に晒されながら外で待つこと二十分。可鈴が家から中々出てこなかった。
腕時計で時間を確認してみれば、長針が十二を指している。つまり現在時刻は、八時きっかりだ。
ホームルームが始まるまで残り時間三十分。ここから学校まで自転車を使って約二十五分といったところだろう。
今から登校しても間に合うか微妙なところだ。
何をそんなに手間取っているのだろうか? 朝食は取らないって言ってたし。
けどあれだね。好きな女子を待つって、ドキがムラムラしちゃうね。
ああ、早く来ないかな。もしかして着替え中なのか。もしそうだとしたら、ラッキースケベとして部屋に突入しようかな。
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