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『可鈴まだかよ。学校遅刻しちゃ……』
『きゃああああ! 翔のエッチ』
『ごめん! 覗く気なんてなかったんだ! ただあまりにも可鈴遅かったから』
『そ、そうなの。なら仕方ないわね』
そんな具合でいけばお咎めなしでいけるんじゃ。
「よし! そうと決まれば」
「決まれば?」
背後から体の芯まで一気に氷つくような声音が返ってくる。錆びたブリキのロボットの如くぎこちなく振り返ると、ニコニコ笑顔の彼女がいた。
なのに、本能が赤信号を発している。体の寒気がとれない。
普段の彼女の笑顔は、お日様よりも暖かいのにね。
それになんだか、彼女の背中に阿修羅が憑いているのは悪い冗談だと信じたい。
「顔にエロいこと考え中って書いてあったのだけど、何を妄想していたのかしら?」
読心術でも可鈴は身に付けたのかな。出来るならどうかその悟りを閉じて頂きたい。
「可鈴遅いなあと思って」
「違うの。私が聞きたいのはその次」
眉がピクピクとひきつっている。相当お怒りのようだ。
これ以上の誤魔化しはきかない。もういっそのこと自白してしまうか?
まあ、したらしたで犯罪者予備軍としてポリスマンに連行されそうな気がするのは、僕だけだろうか。
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