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7月中旬の雲一つない快晴の空にイライラを吐き出すように私は重いため息をついた。
私の名は大江和那。都内の高校に通う普通の18歳。というのは自称で、周りからは才色兼備等と言われ、つい先日は校長と担任に海外に留学を進められるほど頭が良く、運動神経もいいらしい。
友達からは歌手やら医者やら役者など、普通とはかけ離れた物を進められるが私はそんなものになるつもりも無いし海外に留学する気もさらさらない。そういうことを言ってみると周りは「何になりたいの?」と聞いてきて、私が保育士になりたいと言うと「うそー」だの「もったいなーい」だの「どうしてー?」などと喚き出す。私の人生なんだから別にいいと思うが。
しかし私が悩んでいるのはそんなことではない。別に誰に何を言われようと私は保育士になりたいし、夢を変えるつもりもない。私の悩みは。
「カーズーナー!!」
「わっ」
不意に大声で呼ばれてびくりとする。友達の陽子だ。
「おっはよー!! どうしたー? くらいよー!! 朝だよー!! おはよう太陽!! 今日も全力で私を照らせ!!」
「おはよう。とりあえず黙ろうか。朝の8時から大声で喚くのは世間一般では騒音被害と言うらしいから」
「私を受け入れない世間等いらぬのだあああ!!」
なんかRPGのラスボスみたいなことを叫んでいる彼女は井上陽子。私の親友と呼べる友人だが時たまこのテンションに苛立ちを覚えることがある。また、彼女は末期とも呼べるおしゃべり娘で正直、悩みを打ち明けようかどうかさえも悩んでいる。
「はあ……どうしようかなあ」
呟いた後、後悔した。
「んー? 悩みー?」
どうやらとうとう言わなければならないようだ。彼女のしつこさと鬱陶しさはいやと言うほど味わっている私は彼女の目を一瞥して目をそむけた。あれは人の悩みを楽しみにしている目だ。
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