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それから学校に着き、私たちは今日もグダグダと極めて事務的な授業を受け、昼休みを過ごしていた。
「それにしても心配だねー。カズのお兄さんってあの変な人でしょ?」
陽子が購買のイチゴミルクのストローを噛みながら言う。行儀悪いなぁ。
「一応その家族なんだけどね私」
「しかもスッポンポンなんでしょう? 公然猥褻とかやりかねないなあーあの人なら」
「一応その妹なんだよね私」
言いたいことをハッキリ言うのは良い事かもしれないが言って良いことと悪いことがある。今さらそんなことを言う間柄でもないけど少しは常識というか、モラルというものを備えてほしい。
椅子に深く腰掛けたまま私は窓の外から校庭を眺めた。外を歩く生徒は小さく見えて、逆に快晴の青空は非常に大きく見えた。ああ……空が青いなぁ。
「こんな青空の下で全裸か……気持ちいいだろうなあ馬鹿兄め」
そんな意味不明なことを呟くと陽子が鼻からイチゴミルクを噴出し軽くむせた。
「ど、どうしたの?」
「ごほっ……やっぱりあの人の妹だよカズ。よく似てる」
「はあ?」
私と兄が似てるというのは恐らくこの町では彼女だけだろう。別に悪い気もしないがいい気もしない。彼女はハンカチで口の周りを拭くと再び向き直り、私にふふんと笑って見せた。
「もしカズがお兄さんだったら裸でどこ行くの?」
「……あのねえ。私はいきなり叫んだりしないし、全裸で家を飛び出すこともしないよ」
「例えばよ。例えば。さあ、今あなたは全裸で外にいます。目の前にはお向かいのおばさんがポカンとしてます。どうしますか?」
とりあえず逃げるに決まってるでしょ。ため息を着き、仕方なく陽子の話に付き合うことになった。まあ、ほかにすることもないしいいっか。
「はい。じゃああなたは何とか人目のつかない静かな場所に着きました。そこから?」
「んー……森、それか樹海に入ってしばらくそこに過ごす……かな?」
「森かー。この辺ならそうだなー。香奈ちんの家かな」
香奈というのは中学からの友達でとてもおとなしい子だ。なんでも家が寺を開いてるらしく、私有地として寺の裏山を持っているらしい。元々、その辺の地主さんでもあったわけだ。
「まさか……結構本気で探したんだよ? そんなとこにいるわけ」
「香奈ちんの方は探したの?」
被せるように口を開いた陽子に言葉が詰まった。
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