少年は只勇者であるが故に幕開けを知る

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 そんな迷惑な金髪碧眼少女はなぜか刀哉に憑いていた。  いつの間にか刀哉の頭のもとでしゃがみこみ、彼を見下げる英雄の幽霊はいつもどうりニヤニヤと笑みを浮かべ、 「勇者くぅーん、いくら簡単な手合わせだったとは言え、お姉さんに負けるなんてまだまだだねぇー。もしかして君の信念はそんなものだったのかい?」  いつもどうりに、小ばかにして話しかけた。 「知るかよ」  刀哉は顔をしかめた。  この幽霊がこうやってからかってくるのは今に始まったことではない。ここで何か言おうものならその言葉について更に煽りにくるだろう。そのため、最近の刀哉は返す答えも決まっていた。 「ったく、毎回のように信念信念言いやがって。俺にはそんなもの無いって言ってるだろ」 「毎度毎度のことだけど勇者としてあるまじき発言だねー。君なら『僕の信念は誰にも負けないぞ!!』とか言ってくれると期待してるのになぁ」  英霊は空中で刀哉の周りをハンモックに寝ているかのような姿勢で周回し始めた。  まったくもって非現実的な光景である。
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