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刀哉は異変に気付いた。
瞬間で手放すはずだった意識がいまだにあることに。
不思議に思い目を開けると、そこに居たのは、十七ほどの少女だった。
純白のワンピースを、これ以上ないほどに着こなし、
カマキリの持っていた紋様のそれと瓜二つの文字を内に秘めた碧い石のネックレス。
周囲に希望の光をもたせることができるのではないかと考えるほどの金髪。
ほっそりとした体躯はまるで、生えて三年と経たない木の様だった。
彼女の貌はもはや芸術品の域だ。
刀哉は彼女の足元に転がる、ばらばらの鋼鉄カマキリにたった今気付いた。
幾何学模様をつくっていた文字は辺りに霧散している最中だった。
ちょうど刀哉の目の前で儚く散る文字はまるでイルミネーションの光のようだった。
そして、刀哉はここで初めて彼女に助けて貰ったことを知った。
「あの―――」
「私は英雄。一応ここの主やってるよん!よろしくね、勇者クン」
英雄は、刀哉の言葉をさえぎり、言った。
そして、それだけを言うと英雄は金色の粒子となり、消えた。
全てが夢だったかのように。
刀哉は、ここで意識を無くし、ばったりと倒れた。
まだ弱く、軽かった刀哉は彼の幼馴染によって外に運ばれたのだった。
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