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「……もういい。刀哉よ、今日はこれくらいにしてやる。鍛錬を怠るな」
刀哉の姉は家の方向へ踵を返して足早に去っていった。
惰性で仰向けに倒れたままその後ろ姿を見つめていた。
視界から姉の姿が消えたのを確認すると、刀哉は既に朝日が昇っている青空を見上げた。明日から四月。まだ、朝は肌寒い。
そして、考える。
(俺とあいつが英雄の洞窟に入って、帰ってきてからもう六年経った。)
そう、あれから六年。
この街は、栄えに栄えた。人の往来、ビルの建設、駅の増設、全部が全部充実した。
いまやこの街は東京都と並ぶほどの大都市だ。
なぜ、このようなことになったか。
すべて、あの洞窟だった。
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