少年は只勇者であるが故に幕開けを知る

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 英雄の洞窟。  皆、あの洞窟のことをそう呼んだ。  誰が広めたのか、などは知らず、また、そのような疑問もおおよそ多くは広まらなかった。  あるのは、不気味で摩訶不思議な洞窟と、かつてに起こった第三次世界大戦の歴史と、主要なものは、それだけだった。  ただの洞窟など新たに発見された所で誰も気にかけないだろう。騒ぐのはせいぜい地元の子供だけだ。  だが、あの洞窟には四つ、たった四つ、とんでもなくとてつもなく異質なことがある。  細かく説明していこう。 これが、大前提と成るのだから。  まず一つは、その洞窟の現れ出でたタイミングだった。  七年前、第三次世界大戦が終戦した。  一人の少女とその親友六人の命をかけた冒険によって。  ハリウッドの映画でもありえないような突飛な話だったらしい。  彼女は、世界を跨ぐ活躍とその死をもって、何よりも醜く、何よりもおぞましく、なによりも忌み嫌うべき戦争を終わらせた。  そして、その戦争から一年たち、少女の一周忌と終戦記念が行われた。正にその瞬間、  この洞窟は、現れた。  なんの前触れも無く、ただその場所に存在していた。  しかし、終戦後であるため、戦争をした各国や被害を受けた日本は復興に明け暮れ、そんなことは新聞の地元記事にも取り上げられなかった。  そうして、三年経ち(つまり今から四年前)、ようやく洞窟の調査に入った。  レーダーが使えなかったため、直接のり込んだ。  調査団は通信によって、この洞窟の異質な点を伝えた。  二つ目の異質な事柄、それは、テクノロジーだ。  内装は、通常の洞窟とは一切異なり、全てが全てこの地球に無い技術でできたものだった。  調査団の通信によると近未来を想定したSFものの小説に出てきそうな、シンプルかつ無限大の科学を感じるものだという。  俺は六年前に入ったことがあるのでそれはよくわかった。  送られた写真は何処までも続く正方形の通路だった。  それだけでも驚きだが、これの壁や床の素材はわからないのだという。コンクリにも似ているが、違う。  さらに、床からは青白い光があり、前がしっかり見えるほどだった。  調査団はそれに驚き、喜び、更に進んだ。ある一点で通信が途絶えた。  地上に残った調査団は電波が届かないのだろうと思った。そして待った。  しかし、  調査団は帰ってこなかった。
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