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 ようやく叔父の家へと着く。そこは、ちょっとした豪邸だった。高い壁に囲まれた大きな屋敷。その壁の真ん中にある、格子のある柵で閉ざされた、大きな門。その奥からは、鮮やかな色とりどりの花の木が、こちらを用心深げに覗いていた。  父親が門の側の立派な表札の、その下についたチャイムを鳴らす。 〈キンコーン〉  重々しい雰囲気の音が鳴って、インターホンから声が聞こえた。 『はい』 「こんにちは。浅原です」 『ああ、ちょっと待ってください。今行きます』  そう聞こえた後、2、3分は誰も出て来なかった。少年は早く涼しい屋内へと入りたかったが、その望みが中々叶わないので、じれったくて、母親にアイスが食べたいとごねていた。  やがてガチャンという大きな音がしてドアが開き、屋敷の中から人影が現れた。 「やあ、幸江、聡志さんも。よく来たね」  そう言いながら、白髪交じりの初老の男性は鍵をがちゃがちゃ鳴らし門を開けた。
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