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内藤は夕方のデッキについて考える。数回ファイトをして、夕方の目的が曖昧になっている事に気づいた。そんな具体的に内藤は気づいた分けではないが、デッキには軸なる物が存在する。言い換えると主役なるものが存在する。夕方のデッキはツクヨミ軸だとしても、何かが引っかかる。その疑惑はファイト数を重ねていく毎に確信に変わっていった。
「夕方、お前はデッキ全部のカードを使って相手に勝とうとしてないか?」
ファイト後の卓上に置かれたカードを回収していたら、内藤に名を呼ばれて驚いた。初めてまともに呼ばれた気がする。が、それより内藤の言っている事は当たり前のことなんじゃないのか? デッキのカードを全部使うのは普通だろう。そう思っている夕方は、若干頬を染めながら「そうだよ」と素っ気無く言う。
「お前G1にお天気お姉さんだとか、ばにらだとか色々詰め込んでるだろ。全部のカードの効果を都合良く使うのは無理だ、抜け」
「でも」
「でももヘチマもない!! そもそもツクヨミを使う利点としてはだな――」
ここから内藤のツクヨミに関する演説が始まる。
店内に人が少なくて良かったと思いつつ、夕方は自分がヴァンガードを始めたきっかけを思い出した。
中学生の時、夕方はヴァンガードではないカードゲームをやっていた。あの時は楽しかった、同じ趣味を共有できる友達が多くて……。そんな友達の中にヴァンガードをやってる人がいて、僕を引き込んだんだ。カードの絵の一覧の様なものを見せられ、特に魅入る事もなく適当にチェックしていくと、とあるカードで目が止まった。それが満月だったから僕はツクヨミのデッキを作ったんだ。
「――おい!! 聞いてるのかよ」
「聞いてる聞いてる、ツクヨミはデッキの操作が強いんでしょ」
「にしてもよくツクヨミのことあんまり知らないでそのデッキ使ってたよな」
「愛、かな」
キリッとした表情で歯が浮きそうな台詞をいとも簡単に口にする夕方。見てるこっちが恥ずかしい。そう言いたげな目を夕方に向けて、内藤は溜息をついた。
「ええい、デッキを貸せ!! 今日はお前を叩き直してやる!!」
内藤の熱血指導が今始まる!!
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