VSむらくも

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 ショップから出てくる2人の男。一仕事終えた男の顔をしている気がするが、案外そうでもなかったり。 「わー、お昼頃にショップに着いたのに、もう空が暗いやー」  棒読みでチラチラと内藤の顔を見ながら嫌みったらしくそんなことを言う。自分のデッキが強化されたり、ツクヨミに対する考え方のパターンが増えたとも知らない夕方は、余裕そうな笑みを浮かべて内藤を煽る。 「お前なぁ……。まぁいい、次はお前のプレイングを見たいから、俺以外の奴とファイトしてもらいたい」  コミュ障を苦しめる様な言葉を軽々と口にする内藤。  夕方は「ヴぇー」とやる気なく返事をする。 「だってお前言ってたろ。『僕は好きなデッキで楽しんで相手に勝ちたい』ってよ」  括弧の中は、実際に夕方が口にした言葉である。そこを内藤は裏声で言うもんだから気持ち悪い。内藤に引きながら、夕方は今日の出来事を頭の中で整理していく。  僕は今まで中々勝てないのをデッキのせいにしていたかもしれない。いや、していた。でもこれからは違う、僕はツクヨミちゃんと向き合って戦っていくよ。 「っと、俺の家は駅方向じゃないからここで解散だ」 「それじゃーねー」  夕方に背を向けて帰っていく内藤の背に片手を振って、夕方も駅へ向かう。
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