ドロー

2/5
前へ
/28ページ
次へ
 少年にはファイト仲間がいない。それは少年が人見知りだとか、コミュ障だっていう話ではない。表面上、友達と呼べる人間はいるが、少年の趣味を打ち明けたりした訳ではない。少年はそういう人間を学校だけの友達と呼んでいる。  少年は他人に自分の趣味を、内面を見せることを良く思ってない。  話を戻すが、少年のショップ大会の失敗は、ショップ大会にファイト相手を求めに行った事だ。ファイト仲間が知り合いにいないなら、作るしかないのだろう。そう思って少年は、常にそこそこの人数がたむろする高校の図書室で行動を開始することにした。  図書室にいる奴等は、ゲームの通信対戦をしているか、漫画を読んでいるか、小説を読んでいる。ここは各々が好きな事をしていい場所が図書室なのである。 『スタンドアップ、ヴァンガード!!』  脳内で呟き、図書室の席の上に置かれたカードを表にする。少年が考えたファイト仲間作成方法がこれだ。簡単に説明すると釣りである。興味を持った誰かが声をかけてきたら少年の勝ち。嘲笑われたら少年の心が折れてしまう。簡単だが恥ずかしい作戦である。  少年は自分が先攻だということにして、デッキからカードを一枚ドローする。マリガンをした結果、手札にツクヨミは存在しない。G1は持っているのだが、ライドするのは躊躇われる。  G0の神鷹一拍子の効果でデッキから5枚めくる。G1のツクヨミがその中に入っていればスペリオルライドができる。今回はスペリオルライドに成功。それで少年のターンは終了。後は相手から受けるであろうダメージをデッキからめくって、再び少年のターン。  要は仮想ファイトである。一人でもできるデッキ確認を、人目のそこそこある場所で行っているのだ。オラクルのカードをデッキ以外に数枚所持している少年は、デッキを回しながらデッキ構成を色々と弄っていく。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加