ドロー

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 ――4回ぐらい仮想ファイトをやっても誰も釣れない。人目にも慣れた少年の気持ちは楽になり、少年だけが座るこの席は、少年だけの世界となっている。人目があまりないことに気づいた少年は、カードを展開したままトイレに向かう。  少ししてから戻ると、少年が座る席の対面に知らない人間が座っていた。しかもデッキを卓上に置いてFVも裏返しで置いている。  少年が席に座ると、展開していたカードをデッキに戻し、FVを裏返してセットし、デッキを混ぜる。少年の準備を待ってから、対面の男とじゃんけんをして手札交換をする。それからお互いFVに手を伸ばし、高らかに宣言する。 「スタンドアップ!! ヴァンガード!!」  危うく出禁を食らうところでした。司書さんに静かにしろと言われた少年と男は、再びファイトをしようと空き教室に移動していたのだが、男には時間がないようで帰ってしまった。それでもメアドを交換することが出来たので、成果はあったと思われる。電話帳に新たに登録された『内藤』という名を見て、少年は内藤が使うデッキを想像する。  もしかしてパラディン系じゃないよな……ないよね?
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