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夕方と内藤の立場は似ていた。内藤は中学の友達がヴァンガードをやっていたが、高校では親しい人がやっていない。夕方は表面上の友達、グループ行動の時に一緒になる様な友達はいるが、気を許せる様な人や、趣味の話ができる人はいない。
高校生が早く打ち解けるには下か趣味の話をするのが一番。ヴァンガードという共通の趣味がある内藤と夕方は、出会って数日で親しい関係になっていった。
二人並んで歩いていたが、突然内藤が小さなビルの前で足を止める。
「ここだぞ」
小さなビルの2階にショップがあるみたいで、内藤を先頭にビルの中の階段を上っていく。そして待っていたのは普通のカードショップ。小さなビルとはいえ、中は思っていたより広い。さて、来たこともないショップで、最初にやることと言えば。
「このショップはいいぞ。近くにここより大きなショップがあるから常に客が少ない。だからファイトスペースが好きに使える――」
内藤が自慢げに通いなれたショップの説明をして、隣にいるであろう夕方に視線を移したところ、夕方の姿は消えていた。早速夕方はショップを物色しているみたいだ。内藤は呆れながらスリーブが入ったショーケースを覗いている夕方に歩みよる。
「おい小学生、ファイトしようぜ」
内藤は夕方の頭に片手をポンと置いて、高校生に小学生と言った。成長の遅い夕方に対して内藤は背が高いし若干筋肉質で、帰宅部なのに運動部に入ってそうな体格をしている。そんな2人が並べば、夕方を小学生あるいは中学生だと思ってしまう人が出てきてもおかしくはない。
「その呼び方も止めろ」
楽しそうにショーケースを見ていた夕方は、頭に置かれた手を振り払って中腰から普通に立つ。
「止めて欲しけりゃファイトで俺に勝ってみるんだな」
にんまり口角を吊り上げ、内藤はいやらしそうな笑みを浮かべる。
「そんなの余裕過ぎだよねー」
夕方も負けじと汚い笑みを浮かべて内藤を嘲る。
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