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Aさんは、老舗の漬物屋さんに嫁ぎました。
お義母さんは、いつも和服を着て、背筋がピンとした方で、Aさんは随分緊張しましたが、一緒に暮らしてみると気さくで明るい人でした。
結婚して十数年が経ちました。
二人の子供の母親となったAさんは、その日、次男を幼稚園に迎えに行っていました。
帰宅して、Aさんは首を傾げました。
いつも玄関まで迎えの出るお義母さんが出てきません。几帳面な人ですから、外出するならAさんに一言あるはずです。
それに家には人の気配があります。
「お義母さん?」
Aさんは奥の客間を何気なく覗きました。
そこにお義母さんがいました。
滅多に出さないお客様用の座布団を前にしてニコニコと微笑んでいます。
「どうしたのですか?」
そう尋ねると、
「お客様なんですよ」
そう答えて微笑んでいます。Aさんはお客様が見えられると思って、お茶菓子を用意していました。ところが、その日来客はありませんでした。
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