お客様

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夕食の時、「お客様は見えられなかったですね」と言うと、お義母さんはニコニコして「いいえ。見えられましたよ」と答えました。   Aさんは首を捻りました。次男を迎えに言ったのはほんの小一時間です。その間にお客様が来たとは思えませんでした。   月に一度、お義母さんは客間に座り、お客様用の座布団を前に座るようになりました。誰も来ないのですが、尋ねると決まって「来られましたよ」の返事が返ってきます。   Aさんは不気味になりました。   毎月二三日にその儀式が繰り返されます。呆けたのかとも思いましたが、お義母さんはかくしゃくとしています。旦那さんに相談しても、首を捻るばかりで、どうも問いただす気になりません。   Aさんは客間に行くのが恐ろしくなりました。   ある二三日の日、Aさんは気になって客間を覗きました。ぞっとしました。座布団が増えています。一二枚の座布団が並べてあります。お義母さんは小用に立ったのか、姿がありません。   客間に明かりはなく、薄暗い中、線香の香がしました。なにやら人の気配もあります。
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