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事の発端であるきっかけ。
それは、高校二年の秋だった。
その日は陽が良く照っており、それに加えて強くてぬるい風が窓を開けた途端、入ってきた。
俺は窓から顔を出して、直に風を浴びて「あー、だりー。」なんて言いながら隣に寄ってきた影に目を向けて確認する。
「この強力な風は、もしかしたら俺たちに新たなる力を与える為にやってきた精霊シルフィーユじゃないか?」
バカだった。
俺は目線をまた外に戻し、花壇に水やりをしている女子生徒の姿を眺める。
「おい!無視するな!
悲しくなってくるだろ!」
隣で喚き散らす厨二病患者の名前は、糸賀智(いとが とも)。別に覚えなくてもいい。話しかけられても無視をしろ。でなけりゃ厨二病が移る。以上。
「お前、今とても失礼な事を考えただろ!」
「なんで分かったんだ!?」
「お前の髪がネイチャーパーマメントウェーブだからかな」
「直訳で天パーって言いてぇんだろ、知ってるよ!カス野郎!」
「さすが、天パーには敏感だな!」
最早、誰にどんな風に天パーを汚されようが耐性のついた俺はそんな事で怒ったり喚き散らしたりなんかしない。
だが、何故だろう。
こいつに言われるのだけは腹わたが煮え繰り返る程、苛つく。
俺は糸賀を横目で睨みながら舌打ちをした。
「て、ていうかさ!
次の時間、家庭科で実習だけど
行かなくていいのか?」
糸賀が動揺しながら話題を変える。
俺はまだ睨みを効かせながらも、ゆっくりと後ろを振り返り、教室を満遍なく見渡した。
そして、目に映るガランとした教室内。
俺はその光景で一気に血の気が引いた。
「やっべっっっ!!」
「ちょ、待てよ!
先行くなって!!」
俺がすぐにエプロンやら三角巾やら準備して教室から走って出て行くのを見て、糸賀がすぐに後を追いかけてくる。
「んだよ!ついてくんなよな!」
「いや、俺もお前と同じ目的だからね!?」
なんやかんや言いながらも俺たちは家庭科室へと足を進めるのだった。
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