偽浮感

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 浮いている。  私は、人間から、人間の世界から、浮いている。今、浮いている。  はっきりと認識した。私は、ここに存在してはならない。それでも、私は友人の為に笑顔でいなければならない。祝福の笑みを浮かべ、盛大に手を叩いて、場と一緒にお祝を挙げなければならない。 しかしどうだ。なぜ私はここにいる。  結婚式などという一番私に一番遠い所に。新郎と新婦は私の友人だ。あの二人は、なぜ愛なんてモノで繋がろうとしているのだろうか。そんなもの存在しないのに。どうせ数年すれば熱も冷めて、別れたくなったりするのだろう。お互いが気に入らなくなるのだろう。結果は離婚だろう。なぜ、そんなことが、こんな簡単なことが、想像できないのだろうか。  愛とはそんなに強固なものなのだろうか。この二人は、君達は、一体何者なのだ。もちろん人間だろう。そうだった。私が違うのだったな。  人間の皮を被って、人間のフリを精一杯した「出来損ない」 現実から浮いている。笑いながら浮いている。偽って笑っている。偽って浮いている。私の周りだけ、ジグソーパズルの破片が見つからないように、ぽっかりと世界が違う。欠席で集合写真に写らないで、一人だけシールで真顔の写真を貼られたように、生きている空間が違う。  成功した新郎と新婦の歴史に司会が進む。  涙がじわりと滲んだ。彼等にではない。醜くも、自分にだ。  そこで成功者に名前を連ねるのは私のはずだった。私だって、同じスタートだったはずだ。  そう涙した。  いや、違う。これを書いていて気が付いた。  私は、生まれた時から、違うじゃないか。私はあんなに幸せな家庭じゃなかった。  じゃあ、もういいや。そうだ、そうだ。苦しんでも、悲しむ必要はない。 「私の所為じゃない」と言う癖に、「私が悪いんでしょ」と自己嫌悪の優越感に浸る、私の日常に戻ろうか。しばらくは。
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