偽浮感

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 思い出したのは、理不尽な言葉の暴力だ。あの言葉をまた見に行こうか。私は私に向けられる悪意が怖かった。敵意が怖かった。今思えばとてもとても安っぽい悪意だ。画面の向こう側に私の存在を否定する人間がいるのが怖かった。相手が何を考えているのか解らなかった。それも怖かった。私という存在が、相手がそんな行動を取るまでに至らせたと思うと後悔した。その人に見えた私という存在は、相手にどんな影響を与えたのか。どんな悪影響を与えたのか。怖かった。  今思えば、その人は安い人だった。当たり前だが、真剣ではなかった。暇潰しだった。それでも私は怖かった。安物で安売りのナイフだからって傷付かない訳ではないんです。切れる 事は切れます。刺さる時は刺さります。深くまで抉ります。  私はもうそんなナイフには負けないと。刺さっても気にしない。すぐに傷を回復させると。くだらない小さな悪意の礫が降っても、そんなの気にしないと。つまりは強くなると願いました。  それは願っただけで終わりました。強がりだけなら出来ます。昔の様に寝込む事も泣く事もありません。その代りふわふわしています。ふわふわしながら、ただ、頭の整理をする為に物を書く事だけを覚えました。そうやって、きっと本心を抑えています。もう本心がどこにいるかわかりません。この苦しい苦しいと言っているのが本心でしょうか。イヤホンからリピートし続けている音楽も遠くに聞こえたり、時折どこかに行ったりしています。たまに歌詞と心がシンクロします。  私はどうしたらいいかわからない。何が起きているのかわからない。だからもう、逃げたい。現実から逃げて、全てを放棄して、もうずっと寝ていたい。  でもそれはダメだと私が言う。もう一人の私が言う。どこかで、多分後頭部の裏ぐらいで、前に進め、行動しろ、と手順を教えてくる。  それで良いのか、それで良いのか。私には判断出来ない。でももう一人はそれで完璧だと思っている。完璧な大人の対応だとか思っている。それがちゃんと出来るのか。私にそれが出来るのか。今のふわふわした私だぞ。何をしているのかも、よく認識していない私だぞ。そんな私に任せていいのか。仕方ないだろ。他にやるやつはどこにいるんだ。しっかりしろよ。  覚悟を決めろ。笑えよ。冗談みたいに笑えよ。そんなに一々真剣に傷付いていたら、生きていけないぞ
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