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まさか初めて話した後輩に、話せて感激まで言われると思ってなかった。俺が何をしたっていうんだ
今も何が楽しいのか、俺の顔ガン見しながらにこにこしてる渡邊くんが不思議な生物にしか見えない
なるべく目を合わせないようにして食事を続けた。
もしも間違えて俺に恋愛感情でも持たれたら正直困る。男に好かれる趣味はない
そんな気を使わないといけない苦しい時間が過ぎていく
「あ、予鈴」
漸く予鈴が鳴ってくれたことに感謝。これで帰れる!と思って机の上を片付け始める
…なのに渡邊くんは何もしない。もしかして授業出ない気か…?
「…渡邊くん、行かないの?」
「え~だって面倒ですし。俺公欠券使って休もうかな~って」
公欠券…そういえば新歓でもらってたな。
授業サボろうなんて正直羨ましすぎるだろ…俺は絶対休まないけどな。
…さっきからムスッとした表情でこっちを見てる渡邊くんはどうしたんだろうか。
そろそろ教室帰りたいから手短に聞いちゃおうと、どうしたのかと聞けばそれまた拗ねたように言う。
「苗字じゃなくて、名前で呼んでほしいっす」
「えー…そんなこと…」
「そんなことじゃないっす、大事です!」
渡邊くんが何故そこまで名前で呼んで欲しいのかわかんないけど、ここで拒んだら教室に帰るのが遅くなりそうだ。
遅刻なんて絶対したくないし。仕方ないなぁ
「…君の名前なんだっけ?」
「渡邊怜音です!怜音!」
名前を尋ねれば途端に笑顔になる。ちょっと子供っぽいところあるんだな、渡邊くん――じゃなかった、怜音くんは
「おっけ。じゃあね、怜音くん」
名前呼んでさっさと教室に帰ろうとすれば呼び止められた。
まだなんかあるのかと、ちょっとめんどくさいけど振り返れば笑顔の怜音くんがいて。
「呼び捨て希望でっす!」
きらきらした目でそう言う。
そろそろ行かないと本当に遅刻しそうだ。
なんせ教室は三階。ここ裏庭だから一階。まず校舎に入るところから始まるし。
「あー、はいはい怜音怜音。じゃあね」
適当に呼び捨てで呼べば後ろから嬉しそうな声が聞こえた。
そんなに俺と仲良くなりたいのか。
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