20人が本棚に入れています
本棚に追加
大木が並び一杯に広げた枝。
その葉の隙間から溢れる光に照らされた花を摘む少女がいた。
「……ふぅ。
もう、これぐらいでいいかな」
籠の中に一杯に摘んだ花を見た。
少女は艶やかな黒髪を首の後ろで結び1つに結っている。
背中に真っ直ぐな髪が流れる。
細く白い指を伸ばし籠に蓋をするとそのまま地面に横になった。
黒のキュロットから伸びる灰色のオーバーニに包まれたほっそりとした足を投げ出す。
花に包まれ、しばらくぼんやりしていた。
(任務の後に薬草摘みなんて急だったな……。
ま、明日休みだしいいか……)
うとうと眠くなり意識が消える寸前、視線を感じた。
急いで身を起こし辺りをみるが何もない。
「……気のせいかな」
籠を持つと、地面を蹴りその場から離れた。
大木の一本から人が浮かぶ。
「可愛い娘だったね」
「存在ニ気ガツクトハナ……。
中々、鋭イヤツダ」
ゼツが如月が去った方向を見て呟いた。
「細くて小さくて可愛い……。
小南の言った通りだね。
早く暁に来ないかな?」
「焦ルナ。
小南ガ何トカスルダロ……。
ソレヨリ戻ルゾ」
その言葉を最後に木の中に沈む様に消えた。
最初のコメントを投稿しよう!