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──目が覚めると、見渡す限りの大地が広がっていた。空はどこまでも青く、頬を撫でる風は心地いい。けれど、どこか野性味を感じさせられる匂いが漂っていた。
……はい、どうも。みんなの雅史ですwwwどういうわけか俺はこんな広大な土地に一人ぽつんと突っ立っておりますwww
って、いやいやおかしいでしょwwwなんでなんで? いやマジでなんで!? だって俺さっきまで家にいたんだよ? 友人や雄大たちと飲んで食って騒いで大盛り上がりだったんだよ? そんで……えっと、そっからの記憶はあやふやだな。
さては俺、寝たのか? 寝たんだろうな。じゃあこれは夢か。夢だろうな。肌に伝わる空気とか草や土の匂いはやけにリアルに感じるけど、きっとこれは夢なんだろう。
そう自分に言い聞かせてむりやり納得した。そしてふと足元を見てみる。買った覚えのない靴。デザインよりも歩きやすさを重視したような印象のそれは、何かの動物の革や毛で作られている……んだろうな。見るからにそうだ。
服も俺が普段着ているようなものとは違う。服というより装備だ。靴と同様に革製で、動物の毛っぽいもので所々装飾されている。人体の急所を守る為の鎧らしきものも装着しているけど、心なしか脆そうで頼りない。かろうじて右手に持っている剣ですら、表面が曇っていて輝きもない。文句無しに安っぽい。これ絶対すぐ折れる。
ファンタジー世界で例えるなら俺は剣士ってところか。でもこの格好はどう見ても初期装備です。本当にありがとうございましたwww
まず第一に、この剣なによwwwスライム相手にも苦戦しそうなんですけどwww鎧も無駄に重いだけで、耐久性無さそうなんですけどwwwふざけんなよwwwそこはさ、転生したらチートになりました的な感じになるんじゃないの? 俺つえぇぇwwwってなるもんじゃないの?
ここは俺の夢の世界だから、オタク知識全開の俺の潜在意識が反映されるだろ普通? なんで初期装備の剣士なんだよwwwウケるwww
まぁいいや、気を取り直してこの夢の世界を楽しむとしようか。幸い俺はゲーム慣れしてる。RPGもアクションもギャルゲーもwwwとりあえず最初は村人らしき人に話し掛ければいいんだろ。
……と思っていたけど、村どこよwww改めて周りを見ても、だだっ広い平地が続いてるだけ。ファンタジー世界にありがちな大岩があちこちに居座ってやがる。
かといって枯れた大地というわけでもなく、そこらには雑草なのか薬草なのかわからない変な草も生い茂っているし、実をつけた木もいくつか見られる。てことは近くに川や湖でもあるんだろうな。生き物の気配もする。ただ人はいない。
人が暮らす村というより、どちらかというとダンジョンっぽい。ここが俺のスタート地点ってわけか。普通どっかの村から始まるんじゃね? まぁいいけどwwwでもこのままじゃ話が進まねぇなぁ。
仕方ないから適当にブラブラすることにした。正体不明の木の実や草を入手して、微妙にサイズが合っていなかった帽子を籠代わりに進んでいく。
その時──背後の草が踏み潰されたような音を立て、何者かが風を切りながら襲いかかってきた。
「うおっ!?」
激しい金属音が辺りに響く。手にしていた帽子や木の実が落ちても、視線は競り合う刃物に集中して冷や汗を流す。ギリギリ剣で受け止めることができたけど、相手の武器は大剣。一瞬でも遅かったら切られてた。
というか、俺の鉄くずみたいな剣でよく受けきれたな……。夢だから多少は俺に都合がいい展開になったりすんのか? あ、ヒビ入ってら。
「ちょちょちょwwwなんなのお前wwwなんで急に切りかかってくるんですか!?」
暴れ回る鼓動を感じながら半泣きで訴えてみた。目の前の男は俺より背が高く体つきもしっかりしてる。けれど顔を見た瞬間、俺は口をぽかんと開けて間抜けな声を出す。
「は……?」
明るい短髪に鋭い目付き。余裕ぶっこいてる時に見せるムカつく笑顔。こいつ友人じゃねぇかwwwwww
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