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「──ふぅん、そんなことがあったのか」
友人に尋ねると、奴は事情を全て話してくれた。最初こそ警戒してたみたいだけど、こちら側に敵意が無いことが伝わったのか、日が落ちる頃には嘘みたいに打ち解けた。
友人は見た目の通り盗賊で、金持ちから金銀財宝を盗みまくって生活してるらしい。
「じゃあさ、友人のその服も盗んだものなのか?」
「当然! こんな上物、ブクブク肥えたアイツらには勿体ねぇ。俺みたいな男に着こなしてもらってこそ、服も宝石も喜ぶってもんだ!」
「あ、それ格好良いと思ってたんだwww」
聞くところによると、この世界での友人と達間クンは本当の兄弟ではないらしい。それどころか友人は人間、達間クンはエルフ。種族すら違う。
二人の出会いは偶然だった。奴隷商人に捕まり、売られそうになっていた達間クンを友人が助けたのだという。
「別に大した理由はねぇよ。ただなんとなく、気まぐれってやつだ。でもそれ以来兄貴兄貴って付き纏ってくるようになってさ……金づるのひとつも満足に見つけられねぇくせに。ほんと鬱陶しいのなんのって」
友人の口調は心底迷惑そうだった。けれど焚き火を見つめる目はどこか温かい。一緒に過ごした日々を思い出しているんだろうな。
達間クンもツンケンして生意気な態度をとっているものの、決して友人の傍から離れようとしない。
所詮これは夢だと思ってたけど、なかなか興味深い話だった。この二人を見ていると、妙に設定が練られた夢ですねぇwwwなんて茶化す気にもなれない。
心の中では茶化しまくってるけどねwwwww俺の夢壮大すぎワロタwwwwwwファンタジーなのに日本名とか世界観どうなってんのwwwwww
とまぁ心の中でさんざん笑い転げておいて、顔だけはいたって真面目に引き締める俺。振る舞われた干し肉を齧り、友人と達間クンを交互に見つめた。
「……で、二人の目的は? 金持ち襲って金稼ぎまくってるみたいだけど、そんなに金が必要なの?」
「そりゃあ必要だろ」
友人は呆れたように吐き捨てる。
「豊かな生活をするには金がいる。ただ生きるだけでも金がいる。金が無けりゃ飢えて死んでいく。特に弱ぇやつらはな」
最後の一言は低く呟くような声だった。何かを思い出したように目を伏せて水を一気に飲み干せば、その眼光を更に鋭くさせて不敵に笑う。
「だから俺は奪うんだ。有り余る富に溺れて浮かれてる奴らから奪って奪って奪い尽くす。心配いらねぇ、いくら奪っても奴らの生活が苦しくなる事はねぇからな」
「え、なんで?」
「そんぐらいすげぇ金持ち共だからだ。この世はそういうとんでもねぇ金持ちもいれば、今日を生きるだけで精一杯の貧乏人もいる」
ふむ、なるほど。つまり格差が激しいってことだな。金持ちはとことん金持ちに、貧乏人はとことん貧乏に……か。結構シビアな世界だったwww
「で、友人はその金持ちから盗んだ金や宝の山はどうすんの?」
「俺の話聞いてりゃわかるだろ。今を生きるのに必死な奴らにばらまいてる」
面倒くさそうに言う友人の横で達間クンは誇らしげに胸を張る。俺の兄貴はすげぇだろって。
うんうん、確かに立派だな。それに俺の知ってる友人とは違って少し頭も良い。俺は友人の話を聞いているうちに、生活苦に陥っている人々に金を分け与え続けると、いつか施しをアテにして堕落してしまうんじゃないかと思った。
もちろん友人もそう思っていたから、ハナからあちこちを放浪して気まぐれに金目のものを置いていくスタイルをとっているらしい。ほんとお前すげぇなwww身なりもある意味すげぇけどwww
「じゃあお前らはこれからもそういう旅を続けるってことだな。次の獲物はもう決まってたりすんの?」
何気なく聞くと、友人はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに身を乗り出して笑みを深めた。
「おう、聞いて驚け。俺らの次の獲物は……魔王の城にある宝だ」
「ま、魔王!?」
ごく自然に出てきた聞き慣れない言葉に俺は思わず仰け反った。まさかとは思ってたけど、やっぱりこの世界には魔王がいるんだ!
でも落ち着け、ここは俺の夢。てことは魔王も俺の知り合いの誰かだろう。そう考えるとちょっと会ってみたいかもwwwww
「ねぇ友人、俺もその旅に同行させてほしいんだけどwww」
「おう、いいぜ」
「えっ、なんか軽くない? 自分から頼んどいて言うのもなんだけど、俺も一緒に行っていいの? 初期装備よ?」
「囮役にはなるだろ」
「ひっでぇぇwww」
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