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「遅い。」
「ごめん。おもちゃが僕に話しかけてきて・・・。」
これもいつものやり取りである。ベレトはマルファスを一睨みすると、それからは何も言わず横になった。ベレトはほぼ常に眉間に皺が寄っている。バンドの最高責任者で、決定権のあるベレトは、結成当時から常にバンドの先の事を考え、売り込みや契約もほぼ管理し行動していた。
ようやく車が動き出し、車の中ではパイモンがスケジュールの確認をしていた。
「篠マネ、明日は何時に来るんだっけ?」
「明日は9時には行くよ。」
篠原の言葉を聞きながらパイモンはちょっと笑いながら、どこか寂しそうに言う。
「でも、明日で篠マネともお別れか~。」
「一時的に離れるだけですよ。VILLAINSの事はずっと見守ってるから。」
篠原はVILLAINSがメジャーデビューを果たした時からのマネージャーで、この業界について、多くを彼らに教えてきた。この度、会社内で昇格し、マネジャーの仕事を辞め、これからは間接的にVILLAINSに関わるらしい。
「それで、明日新しいマネージャーも来るんでしょ?」
「え、ええ。まあ。」
「なんか、歯切れの悪い言い方じゃん・・・。」
苦笑いのパイモンに篠原は慌てて付け足す。丁度明日、篠原に代わって新しいマネージャーも来る事になっており、VILLAINSのメンバー全員がまだ会った事がなかった。
「しかし、素直で真面目な優しい子ですよ!君たちが望んだ要件にぴったりの子です!ただ、新人だけど・・・。」
すると、寝ていたはずのベレトが口を挿んだ。
「何回も言ったけど、なんで新人なんだよ?他にいなかったのか?」
ベレトの言葉に篠原は手を合わせて謝った。
「すまん!一年だけ!頼む!この通りです!」
「まあ、会ってみないとわからないし、落ち着けってベレト。」
そう言われてベレトは不機嫌そうにまた横になった。
そのやり取りの中でもお構いなしでベレトの横で本を読み続けるアミー。常に本を読んでいて、無表情かつあまり話さないのが特徴である。
一方、マルファスは座席の上で体育座りをしながら変わっていく車外の風景を眺めていた。
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