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二人の姿が、やがて階下に続く角の向こうに消えていく。
志穂は脱力したように長い息を吐いた。
「いい加減にしないと退学になるわよ」
強い口調で言いながら、志穂は修司を睨み上げた。
が、修司の妙に神妙な顔つきに眉根を寄せた。
「どうしたの?」
「あいつ、何者だ?」
二人同時に口を開いた。
志穂はその言葉の意味が判らず、小さく首を傾げてみせた。
「何者って……神主さんの孫よ」
「そういう意味じゃねぇよ」
苛立たしげに言葉を遮られる。
志穂は困惑したように修司を見上げた。
「あいつ……」
「なぁに?どうしたっていうの?」
「さっき、あいつの……」
途中で語気が弱くなり、修司はそのまま口を閉ざした。
「あ……。いや、なんでもねぇよ。きっと見間違いだ」
修司は何かを否定するようにゆるゆると頭を振ると、やがてゆっくりと歩き出した。
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