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「知らねぇわけねぇよな、この町の言い伝え。俺は」
「知ってるわよ。自慢じゃないけど、もう17年もこの町で暮らしてるのよ?」
皇太の言葉を遮り、志穂は口早に言った。
皇太は驚いたような表情を浮かべたが、すぐに鋭く志穂を睨み付けた。
「だめよ、そんな目をしたって。本当に恐くなんてないもの。言い伝えなんて作り話だし、現実と結びつけるなんてナンセンスだわ」
皇太に口を開く暇も与えずに、志穂は強い口調で言った。
皇太の目がじっと志穂を見つめる。
まるで心の中を探られているような感覚が志穂を包み込んだ。
やがて、皇太は諦めたように小さな息を吐くと、志穂から目をそらして歩き出した。
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