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皇太が転入してきてから数日が経った。
今、一部の生徒達の間で色々な噂が飛び交っていた。
それはやはり『蒼き髪の日子』の話だった。
そしてそれに重ね合わせるように、皇太が生まれた時の事が持ち上がっていた。
激しい嵐の日に生まれた皇太。
志穂が墓地で見たあの姿、真っ青な髪と底光りする青い目を輝かせたあの姿で。
皇太の母親は、出産を終えると同時に息を引き取ったそうだ。それも、ミイラのように痩せ衰えて……。
彼女は亡くなる直前、謎の言葉を残している。
『私の血を……全ての力を……』
意味が判る者などいなかった。
ただ、体中の水分が吸い取られたような有り様の死であった事だけが、町の人達の記憶の中にあった。
全てが言い伝えと同じだった。
言い伝えの日子は、突然の嵐の中で生まれた。
そう。妖しく揺れ動く真っ青な髪と不気味に底光りする青い目を持って。
この世に生を受けた日子は、生まれ出る直前に母親の生気を全て吸いとった。
当然、母親はミイラのように痩せこけてこの世を去った。
そして日子はこの地を離れ、『聖なる狭間』で動乱の時を待つ。
やがて時が満ちた頃、日子はさらなる力の源を得るため、この地に舞い戻ってくるというのだ。
こうして『蒼き髪の日子』と皇太の出生を照らし合わせてみると、全ての出来事が一致している。
本当にごく一部ではあるが、その生徒達の皇太を見る目は、転校生に対する興味の眼差しから疑惑と恐怖の色に変わっていた。
朝のホームルームが始まる前、教室には異様な空気が立ち込めていた。
普段と変わらずに話をするクラスメート達。
しかし、その中にある、奇妙な静けさと緊張感。
ざわめきと静けさが、微妙なバランスを保っていた。
あの時と同じだ。
初めて皇太を見かけた時の、駅前のあの雰囲気と。
法子と昨夜のテレビドラマの話に花を咲かせていた志穂は、頭の片隅で思い出していた。
「だって、言い伝えと同じだろ。母親を殺したって……」
ざわめきの中に聞こえてきた男子生徒の密かな声に、志穂は耳を澄ました。
(あの2人だわ)
どうやら教室のドアの側にいる2人のようだ。
志穂の耳に届く、余りにも中傷的な言葉。
怒りと苛立ちが次第に志穂の中で膨らんでいった。
彼らの話し声に気づいた法子と顔を見合せ、志穂はちらりと後ろを窺った。
皇太はぼんやりと頬杖をつき、窓から見える遠くの景色を眺めている。
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