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一呼吸おき、平田はさらに声を潜めて続けた。
「その子の髪と目の色が普通じゃない」
書類の写真を指差す。
高橋は写真に目を這わせ、眉をしかめた。
髪は少し茶色がかっているようだが、染めたようでもない。目の色にしても、特に問題はないように思えた。
「どこが普通じゃないんです?」
「……その姿はその子の本当の姿ではない。本当は……」
高橋はごくりと息を飲んだ。
「本当は髪と目が真っ青なんだ」
二人の間にしばらくの沈黙が続いた。やがて、
「やだなぁ、平田先生!」
高橋は大袈裟に吹き出した。
「だめですよ、言い伝えと絡めて脅かそうとしたって。大体、僕はその手の話は信じないタチですからね。それよりも、この生徒もなかなか一癖ありそうですから、僕のクラスの長岡修司と上手くやっていけるか、そっちの方が心配ですよ」
高橋の声をけたたましいベルの音が遮った。
1学期で赤点を取った生徒達の、特別授業開始を知らせるベルだった。
高橋はうんざりとした顔をすると、出席名簿を手に取り職員室を後にした。
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