第1章 1ー2

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一呼吸おき、平田はさらに声を潜めて続けた。 「その子の髪と目の色が普通じゃない」 書類の写真を指差す。 高橋は写真に目を這わせ、眉をしかめた。 髪は少し茶色がかっているようだが、染めたようでもない。目の色にしても、特に問題はないように思えた。 「どこが普通じゃないんです?」 「……その姿はその子の本当の姿ではない。本当は……」 高橋はごくりと息を飲んだ。 「本当は髪と目が真っ青なんだ」 二人の間にしばらくの沈黙が続いた。やがて、 「やだなぁ、平田先生!」 高橋は大袈裟に吹き出した。 「だめですよ、言い伝えと絡めて脅かそうとしたって。大体、僕はその手の話は信じないタチですからね。それよりも、この生徒もなかなか一癖ありそうですから、僕のクラスの長岡修司と上手くやっていけるか、そっちの方が心配ですよ」 高橋の声をけたたましいベルの音が遮った。 1学期で赤点を取った生徒達の、特別授業開始を知らせるベルだった。 高橋はうんざりとした顔をすると、出席名簿を手に取り職員室を後にした。
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