夢見る少女と久遠回廊

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その夜、藪笹神社は大変な事態でした。 何分、見習い魔術師が神級クラスの精霊――もとより神そのものの召喚に成功する事は、未だかつて無い快挙なのですから。 噂とは広まるのも早いもので、どこから流れたのか、その夜私の父はお偉いさんに呼び出されることになりました。 更なる魔術の発展の名の元に逐一詳細な状況報告を余儀なくされるということです。 「それにしても、神様がこんなに簡単に出てきていいものなんですか?」 と、私は神社の奥に布団やらを持ち出し、自分のテリトリーを築きつつある太陽神に向かって問いました。 「別におかしい事は無かろう? まあ、妾としても呼び出されるのは“卑弥呼“の時以来、久方ぶりだが…… それに神は総じて昔程の神聖さは失っているし、今は召喚の手間というのも前よりは簡素になっているはずだぞ」 苦い顔をして答えるアマテラス。私は更に質問を重ねます。 「つまりどういう事ですか?」 「信仰心の違いかな……信仰心の違いによって、神聖というのは変わってくるんだ。 いかに元が優れていようが、それは信心あってのことだ。 逆に元が人であろうが、信心に底上げされればソレは神になる。 大方の例で言うと、ムハマンドだとかそのへんのオッサンも……」 荒れ狂う危険なネタの予感に、私は慌てて禍の元を押さえつけます。 「辞めてください、ムスリムに襲撃されるので」 「フガフガ(ちょっ、やめ……)」 つまりアマテラスの話を引用すると、自分が神であろうと、本来の力を神聖と共に失っているので優に召喚できた。そういう事です。
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