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「そうムキになるな、別に損する事でもなかろうて」
悪びれもなく笑うアマテラスに、私は半ば諦めの気持ちで答えました。
「損しますよ!!……主に……時間とか!!
……まあ、承った事はしょうがないとして、一体どんな相談だったんですか?」
その時でした、アマテラスの面持ちが今までに無いくらいのドヤ顔になったのは。
「……農業」
「…………は?」
「だ、か、ら、農業だ!! 畑の作物の育ちが悪いという相談なのだ!!」
後から知ったのですが、アマテラスには太陽神としての顔の他、豊穣神としての顔も持っていたということです。
要は専門分野だったので最高にハイになっていたということです。
でも、そういう相談は植木屋にするべきでしょう。普通は。
「それで、アナタはどうするんですか?」
「勿論、受けるに決まっておろう!! なんせ妾は世に知れ渡る他でもないアマテラスそのものなのだからなっ!!」
そんなアマテラスに私はすげなく答えます。
私には関係無い話ですし。
「まあ、どうしてもというのなら、人様に迷惑かけずに――あと、5時には帰ってきて下さいね」
踵を返し、自室へ戻ろうとする私。
しかし、私が自室へたどり着くことは無く、アマテラスに阻止されました。
「美咲、なぜ行かんのだ? 神の信託を聞き行動に移すのは巫女たるものの役目であろうに」
どうやら知らぬまに、アマテラスの脳内では主従関係が逆転していたようです。
「私が行かなければならないんですか? どうしても?」
「そうだとも!」
ああ、その発想はなかったわ。
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