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ここはなにもない場所。
色も水も空気も光も感覚も視覚もなにも感じられない暗くとても寂しい場所。
ここで感じられる唯一の存在。それは、ここに閉じ込められている者から出る声だけ。
「あ~、まんじゅう食べたい。」
姿形はどこにも見えなくて男とも女とも分からない機械のような声がここに広がるようにどこからか聞こえてきた。
「酒飲みたい」
また機械のような声だがわずかに違う声。
「お前ら真面目にやれ」
さらに違う声。
「やってるやってる。今ならあれだ、片手でペットボトルのふた開けられる」
「僕なんて小指でプルタブ取れるもんね」
「おま、爪剥がれるぞ」
「本当にいいのか?これからすることは私達もただではすまないぞ」
最後に聞こえてきた機械の声は寂しそうな声で言う。
「スルーかい」
「放置プレイは好きじゃないでござる」
「私はこんなことしなくても、お前らと一緒ならそれでいい気がする」
「いい加減に諦めろ。多数決で決まったろ」
「その心配性治した方がいいと思うでごさる」
「そうだぞ。ってかごさるってなんだよ、なんでさっきから変な語尾になってんの?」
3番目の心配をまるで聞いていない二人は半笑いで話している。
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