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『手を繋ぐことすら怖い』
春の温かい陽射しが眩しい今日
我が男子校では花見の真っ最中だ
満開の桜がそよ風に揺れ、ひらひらと桜の花弁が舞い散る
不意に陽射しが陰る
振り返り、頭上を見上げれば見慣れた顔がそこにある
「どうしたの?みんなの所に行かないの?」
その屈託のない笑顔に自然と顔が緩むのが分かる
ああ、この笑顔好きだなぁと相手の顔をぼんやり眺めながら思う
「トオル?」
「あぁ…ちょっと休憩。騒ぐの疲れちゃった」
そっか、と言って俺の隣に腰を下ろすと沈黙する
そのまま暫く何も喋らない
けど、気まずくなるワケでも話題がないワケでもない
「…」
「…」
チラッと相手の方を見れば、向こうもこちらを見ており思わず2人して吹き出してしまう
「ふふ、何かしおらしいトオルって変だね?」
「なんだとー!失敬な!俺はいつだって大人しいじゃん」
関を切ったかのように喋り始める
何も考えなくても言葉が出る
自然と表情が綻ぶ
でも、このままでも良いのかと違う自分の声が聞こえる
このまま曖昧な関係で良いのかと問われる
『お前はこのまま友達以上恋人未満で満足なのか?なぜもっと踏み出さない?』
分かってる
自分が現状に満足していること
今の関係が心地よいこと
そして、すぐ側にある律の手を繋ぐことすら怖いこと
それぐらい分かってる
トオル→律
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