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『君がいい』
訳もわからず走った。
ただひたすらに走った。
気が付けばトオルは屋上に立っていた。息が切れ、肩で呼吸をしている。
「よ、そんなに慌ててどうした?」
不意に声が聞こえる。
そちらに顔を向ければ見知った相手が立っていた。
「…慶次郎」
慶次郎の姿を見るや否や勢いよく抱きつく。そんなトオルを見て慶次郎は不信そうな表情を浮かべる。
「トオル?どうした?」
「律に嫌われたぁああああああ!!」
堰を切ったように大声をあげて泣き始めたトオルに驚く慶次郎だが、言われた言葉の方が衝撃的だった。
「はぁ!?律がお前を嫌うわけないだろ?何があったんだよ?」
トオルを落ちつかけようと抱き返し頭を撫でてやれば泣き声が徐々に小さくなり、落ち着きを取り戻すと何があったかポツリ、ポツリと話し始めた。
「何日か前に律が怒って、なんで怒ったのかわかんなくて、そしたらずっと黒くんのままでさっき黒くんに…っ!?」
突然、慶次郎を突き放す。
何か驚いているような怯えているような表情で慶次郎を見る。
「俺、黒くんのいう通りだ…誰にでも引っ付いて最低な奴だ…」
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