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『見上げる先に』
「やっほー!放課後だ!お前ら遊び行くぞ」
HRを終え、一斉にざわつく教室の中、一際目立つ声が聞こえる。
「トオル…はしゃぐなよ」
呆れたように慶次郎は帰り支度を始める。その隣には紫杞が座っている。
「遊ぶって言ってもどこ行くんだよ?」
トオルの声を聞いて京輔と律もやってくる。毎日と言っていいほどこの五人は放課後も一緒だ。
「あー、、ケーキ屋巡り?」
周りに立っている面子を見上げながら疑問系で答える。それを聞いた京輔は嫌そうな表情を作る。
「この前行っただろ?」
「じゃあ、何がいいんだよ?…てか、最近肩痛い」
提案を否定されれば不服そうな表情を作るが、ふいに身体の不調を思い出すと両手を上げて伸びをする。
「律…お前、まさか…!?」
「いや、肩だから」
慶次郎のボケに京輔がすかさずツッコミを入れれば、律は訳が分からないという表情をしながらトオルを肩を揉む。
「え?どういう意味?」
「いや、ごめん…何でもないです」
そんな周りは無視して紫杞がトオルを問診する。
「最近なにか重たい物でも持ったりした?」
「んー、、してない。肩ってより首が痛い…あ」
律にマッサージして貰ってだいぶ楽になったと相手を見上げれば何かに気が付く
「最近首が痛いのってお前らを見上げてるからじゃん!何だよ、みんなして180超えやがって!」
痛みの原因が分かればたいして心配するトコはないと皆が笑い、教室から出るためドアへ向かう。
「じゃあ、トオルが人を見下ろせるとこにでも行くか?」
「よっしゃー!港の赤いタワーまで競争だ!」
京輔が冗談半分で言えば、慶次郎が面白がって小走りで先に行く。
「あ、けーじろ!ズルい待て!」
「トオル!カバン忘れてるよー!」
それに続いてトオル、律が走り出す。
「あいつらはガキかよ…普通に歩いて行けば良いのに」
「そこがあの子らのいいとこじゃない?じゃあ、お先に」
二人残された京輔、紫杞は後ろから付いて行く形になっていたが、突然紫杞も先に行ってしまった三人を追って走り出す。
「は?ちょ、待ってて!…結局こうなるのかよ」
しまいには全員港の赤いタワーへ向けて走り出していた。
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