夢の中で

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今日のトオルは何か変だ。大体変な事をしているが、昼休憩のあとからソワソワして落ち着かない。 「おい、どうした?」 俺が声をかければビクッと肩を揺らして振り返る。キョロキョロと視線を動かして辺りを見渡す。 「あ、慶次郎…り、律は一緒じゃない?」 「いや、一緒じゃねーよ?律なら図書室に居たぜ。呼ぼーか?」 「い、いいいやっ、いい!」 凄い勢いで否定された。 俺は呆気にとられて空いた口が塞がらない。また喧嘩でもしたのか? 「いや…今は律に会いたくない」 会いたくないなんて言うからやはり何かあっただと思って訳を聞こうと身を屈めれば後ろから声が聞こえる。 「あれ、慶次郎にトオルじゃん」 まさに話題の主がそこに立っていた。それを見たトオルは脱兎の如く逃げ出す。 「お、おい!トオル!?」 * * * ここまで来ればもう追って来ないだろう…今日はどうしても律に会いたくなかった。 「…ねぇ、何で逃げんだよ?」 後ろから今、一番聞きたくない声が聞こえゾワッと鳥肌が立つ。振り返ると律が直ぐ側に立っていた。 「うっ…あ、あの…それは」 俺がなんて言えばいいか分からず逃げようと後ず去れば、ドンッと壁に押さえ付け逃げられないようにされる。 「ちゃんと俺の目を見て答えろ」 どうやら今は黒くんらしい。 真っ直ぐ見つめられ、顔が近い。 俺はその視線が耐えられず目を逸らした。自分でも顔が赤くなっているのが分かる。身体が熱い。 「あ、あのね?引かない?」 俺は恐る恐る黒くんへ視線を向ければニヤッとニヒルな笑みを浮かべていた。 「ああ、だから話せよ?」 「今日中庭でお昼寝してたら律に…ち、ちゅ…ちゅ…」 なかなか次の言葉が出ず、どんどん視線が下へ落ちていく。不意に顎を掴まれ強制的に黒くんの方を向かされる。 「もしかして″オレ″の方にキスされる夢でも見たのか?」 「…っ!?!?な、なななんで分かったの!?…あ」 「ハハ、冗談だったのに当たった?」 顔から火を吹いたんじゃないかって程に顔が火照る。黒くんに言い当てられたこともだが、そんな夢を見てしまった自分が恥ずかしい。 「…ふ~ん、俺じゃなくてオレだったのか」 黒くんが小さく独り言を呟き、何の事か分からないでいるとおデコを指で弾かれる。 「次はちゃんと俺で見ろよ?」 「…え?」 この話の真相は後に現場を見た紫杞によって明かされるが、それはまた別の話…
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