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「……怒りましたか? でも私には判る。貴方は誰よりも美しくなりたいと思っている。心が綺麗なら顔は関係ない――そんなのはまやかしです。どれだけ綺麗事を並べても女に生まれたなら綺麗になりたいという願望はどんな人間だって持つのですから」
瞳は唇を噛み締めた。
「これが最後の質問――いえ最後のチャンスです。貴方は美しくなりたいですか?」
女の言葉は妖しく、そして心を鷲掴みにされたような感覚さえ瞳に与えた。
「本当に――綺麗になれるの?」
「それはあなた次第ですよ。さぁもし生まれ変わりたいのならここにサインをして下さい」
彼女が懐から取り出した紙切れに瞳は一瞬躊躇ったが、そこで自分にはもうどうせ失うものが無い事に気が付き、そして女の差し出した紙切れに自然とサインをしていた。
「ご契約ありがとうございます。それでは早速貴方にチャンスを与えます」
(早速?)
瞳の心に疑問が沸き起こった直後その口が何者かに塞がれた。思わず手足をばたつかせたが意識は次第に暗い闇の底へと沈んでいった。
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