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泰子の母は急いで家を出た。
ほぼ着の身着のままで。
校舎までは自宅からはそれなりの距離がある。
だが車も自転車も持ち合わせてなく、バスを待っている時間も無い。
タクシーも通るような所ではないので母はとにかく走る事しか出来なかった。
泰子の母は娘と真逆にかなりやせ細っている。
当然体力も無い。
数十メートル走っただけで息が上がる。
心臓の鼓動が激しくなる。
だがそれでも走り続ける。
急がなければ――急がなければ――
泰子はこれ以上何をしでかすか判らない。
だが母が、息も切れ切れに中学の校舎に辿りついた頃には全てが遅かった。
校舎の中には白黒ツートンカラーの車体が何台も止まっていた。
車体で回る赤色灯の光が泰子の母の気持ちを更に不安にさせる。
次々と集まる野次馬たち。
そして校舎の玄関から姿を現したのは、顔を隠され手錠を何重にも嵌められた娘の姿であった――
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