~美への憎悪と憧れ~

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「そうよあのゲームのように。全てのパーツを変えて美しく生まれ変わるの。私にはそれが可能よ――勿論貴方がどんな事をしてでも美しくなりたいと願うならだけどね」  そう言って女は右腕で泰子を締め上げたまま、左手で何かを取り出した。 「貴方ちょっと怖いから、これで証明とさせて貰うわ。ボイスレコーダーよ、そしてこれが最後のチャンス。貴方は美しくなりたいですか? なりたいなら名前とこの契約を受けると声に出して言いなさい」 「……そんな話し信用できると思うのかよ」 「信じる信じないは自由よ。駄目ならほかを当たるだけ。でもそうねもし受けるなら貴方が綺麗に生まれ変わった後、あのアバターのパーツ全てを返してあげてもいいわ」  女の言葉に泰子の両目が見開かれる。 「本当だな!」 「えぇ。嘘は何も言ってないわよ」 「だったら! 福耳 泰子その契約を受けるわ!」  よく通る野太い声で泰子が叫んだ。  女は一度ボイスレコーダーでその音声を確認し、 「これで契約完了ね。じゃあ早速――」 と言った直後、一気に腕の力が強まり泰子の頚動脈を締めあげる。 「あ、ぐぁ――」  呻き声と共に、泰子の目の前が真っ白の光に包まれた。  そしてそのまま意識が遠のいていったのである。  
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