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うす暗い路地裏。
建物に阻まれ、ここからは日の沈むようすを見ることはできない。
ビルとビルの狭い隙間に二、三人の走る足音が響く。
時折振り向きながら、足音の主たちは奥へ奥へと進む。
高校生と思しき風貌の三人の男は、緊張でこわばった顔に汗をかきながら逃げていた。
荒い呼吸で走っていると、一番先を進んでいた男子高生の足音が止まった。
あとにつづく男子たちも足を止める。
目の前には飛び越えることも困難そうな高いコンクリートの壁がそびえていた。
「なんだよ――」
三人のうちの1人が、その壁を見上げながらつぶやく。
どこかに抜け道はないかと辺りを見回す三人。
しかし、動けそうな場所は今走ってきた自分たちの後方へ伸びている道だけである。
動けずにいると、カツン、カツンと背後からゆったりとした足音が聞こえてきた。
一番後ろの男子が恐る恐る、自分たちの後ろを振り返る。
すると、何者かがこちらに歩を進めている姿が見えた。
その人物の後ろから差し込む光が、地面に長い影を伸ばしている。
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