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「…っ、やだよぉ…」
一度出てきたものを止めることは、なかなかできなくて、私は声を殺しながら泣いていた。
泣きたくなんかないのに。
泣いたって、何も変わらないのに。
ただ、凌が困るだけ。
涙を止めようと、必死で顔を拭う。
けれども、溢れてくる涙は止まらない。
そんな自分に嫌気がさした時、凌がそっと私を抱き寄せた。
「凌…?」
驚いて顔を上げるが、近すぎて表情を見ることができない。
凌は無言で私をしっかりと抱きしめている。
最初は驚いたけど、凌の温もりにだんだんと心が落ち着いていく。
あんなに止まらなかった涙も、気づいたら止まっていた。
私が落ち着くと、凌はそっと体を離し、私の目をじっと見つめてくる。
さっきの目よりも、真剣な目だった。
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