プロローグ

3/5
36人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
シャワーの後、朝飯の準備のために隣の部屋へ行く。 キッチンに入った俺は、トーストを焼いてる間に冷蔵庫からハムと玉子を取りだし、フライパンで適当に調理する。 適当だからハムは破れてるし、目玉焼きも形が崩れてる。 が、味に問題なければ俺は全く気にしない。 焼けたトーストの上にそれらを乗せ、もう一枚で挟む。 半分くらい食べたところでやっと最初にスイッチを入れてたコーヒーメーカーのランプが出来上がりを知らせた。 俺は器用に残りのトーストサンド擬きを口にくわえたまま、マイマグカップにコーヒーを注いだ。 カップを手にとり、もぐもぐと歩きながら残りを平らげ、キッチンから出たところにあるソファへ座ったところで、俺が寝ていた部屋とは反対側のドアが開いた。 「おはよう」 コーヒーを一口飲んだあとドアから出てきた人物に挨拶をした。 「……はよ。──それ、まだある?」 俺の手の中のカップに視線を寄越した人物──同室者の坂井優は、寝起きそのままの格好だ。 「ある」 俺は一言で返すと、ゆっくりとコーヒーを味わう。 坂井は寝癖のついた髪を気にすることなく、あくびを噛み殺しながらキッチンへ行くと、すぐに出てきた。 その手には、もちろんコーヒーカップ。 しばらく二人して無言でコーヒーを啜っていると、坂井が口を開く。 「おまえ、その格好、やめろよな」 何度か聞いたセリフに、俺は肩を竦めた。 何が悪い。 男子寮の、それも同室者もいるとはいえ、俺の部屋だ。 「……せめてシャツくらい着ろよ、斗真…」 パンツ一枚で共有スペースをうろうろすると、坂井にたまに言われるセリフだ。 残りのコーヒーを一気に飲むと、空のカップをキッチンへ持って行き、制服に着替えるために再び自分の完全なプライベートルームへ向かう。 「──無視かよ……」 後ろから聞こえた呟き。 俺は振り返ると、溜め息をついていた坂井に向かって笑いかける。 「坂井が着させてくれんなら、いつでも着てやるよ」 「──っ」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!