第1章

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. 「―――はぁ……またあの夢か……」 窓から差し込む暖かな太陽の光に照らされたベッドの中で目が覚めると同時に漏れるため息と言葉。 理由は言うまでも無くつい今しがたまで見ていた夢のせい。 数年前から度々見始めたあの夢は月日が経つ毎にその頻度を増していき、ここ最近はほぼ毎日のように同じ夢ばかり見ている。 何時も同じところから始まり、同じところで終わる夢。 さすがにこれだけ同じ夢を見れば怪しいとは思うけれど、かと言って夢は夢でしかないためオレにはどうする事も出来ない。 そんなわけで現在はすでに考えるだけ無駄と諦めている。 加えて別段何かしらの実害があるわけでもなく、あえて言うのならば寝起きに多少憂鬱な気分になる程度。 それも冷たい水で顔を洗いさえすれば綺麗さっぱり無くなるのだから問題は無いと言える。 ……ただ顔を洗うまではどうしても憂鬱な気分は続くため、やはり問題があると言えるのかもしれないのだが。 兎にも角にもこんな感じで自分に害を為さない事であれば何にだって慣れてしまう。 それが俗に言う人間という種族であり、御多分に洩れる事無くその種族の中に含まれているのがオレ―――シエル=デュークである。
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