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密かに指折り数えて待ちわびた、終業式の日のことでした。 いつものように机に書かれた悪口を消そうとして筆箱を開けると、消しゴムが無くなっていることに気がつきました。 落としたかな、と机の周りを見渡してみてもさっきから背中にポコポコと投げつけられていた細かな消しゴムの欠片が散らばっているばかりです。 あの消しゴムは、あまり会えないお母さんが勉強頑張るようにと買ってくれた道具のひとつだったから、諦めないであちこち見渡してみてもクラスメイトの嫌な笑いが見えるばかりでした。 やがて一人の男子が「おい、おとこおんな、あれあれ」と遠くを指差したので目を向けると、ゴミ箱のそばに削り取られて使い物にならなくなった消しゴムの残骸と、見慣れた消しゴムカバーが投げ出されていました。 さっき、こっそり投げつけられていた消しゴムのカスは私のものだったようでした。 結局机の悪口はハンカチで拭いとって、蒸し暑い中体育館に集まります。 校長先生が夏休みの過ごし方とかについてお話していると、やっぱり後ろのほうから手がのびてきて体をはたかれます。 振り向いても知らない振りをするから相手にしないようにしていたら、どんどん叩いてくる力が強くなってきて、ついに服を引っ張られて転んでしまいました。肘を擦ってしまって皮が少しめくれ血が出ました。 先生が来てくれて周りからたくさん責任転嫁の声が聞こえてくるけれど、私は大丈夫と答えて話をまた聞きました。 帰りの会も終わって、夏休みが始まり、みんなが私に興味をなくしたように騒いで帰っていきます。 毎日プール行こうよだの、ラジオ体操のときにカード持ってこいだの聞こえてくるなか、私は一人だけ職員室によばれました。 「みつあきちゃん、さっきお父さんから電話があってね。今からお迎えくるって」 担任の先生が言うには、これからまっすぐ車に乗って叔父さんの家に行くらしいです。 言われた通りに誰もいなくなった教室で夕方まで待ち、やっと来た車に乗って出発します。 お父さんと、助手席にお兄さん。 会話はありませんでした。 ただ肘の絆創膏を見たお父さんが「どうした」と言ったので、ただ転んだと答えたら「馬鹿だな」と返されたくらいです。 ここ最近、お父さんとお兄さんが喧嘩してたせいもあってか二人とも不機嫌そうです。 何時間も、高速道路を走り、名前も知らない町に到着したのは真夜中に起こされたときでした。
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