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「ひどいですねぇ、あたしはいつもこの時間ですよ」
ふくれたように抗議するが、実際この時間には滅多に起きない。
「それで? 今日はなにを企んでいるのかな?」
「えへへー。バレました?」
「バレバレですよ」
どうせなにか変なものが欲しいとか言うんだろうと思いながら、寝巻きを着替える。
「あら、葉一さま、そんな人前で簡単に脱ぐのはいけません」
「なに言ってるの、いつものことじゃない。というかあなたは女性でしょう? 男性を前に着替えるなら言われてもいいけど」
「確かにそうですが、着替えるさいは『着替えるから少し外で待ってて』ぐらいは言いましょうよー」
「自宅で身内の女性にわざわざそんなこと言うの? それで、なにか欲しいものがあるんじゃないの?」
「ええ、そうなんですよ~♪ ・・・ってあれ? あたしなにか欲しいなんて言いました?」
「あなたの考えてることなんてすぐに分かるよ」
「えへへー、それがですねえ。猫を飼いたいなぁ・・・、なんて思ったりして」
「・・・猫?」
「はい! この猫です!」
どこからか出した雑誌に載っていた猫は、なるほど確かに可愛い。
「それで! どうでしょうか!?」
「えっ、なにが?」
「だ・か・ら! 飼ってもいいですか?」
まあ、今までに何かを飼ったこともないし、たまにはいいのかなぁ・・・。
「そうだね、金がしっかり世話するっていうのなら、飼ってもいいよ」
「本当ですか!?」
「ダメです」
いきなり、というかいつの間にか金の背後に立っていた男が却下した。
「うわぁ!」
「そんなこと言って、絶対に世話はしないんですから、見てるだけにしなさい」
「あら、白おはよう」
「おはようございます、葉一さま」
白と呼ばれるこの男は、金と共に葉一の世話をするのと、秘書のような補佐のようなこともこなす大変有能な男である。
切れ長の目に黒いショートヘア、銀縁のメガネがインテリの印象を深めている。
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