1. 来客

3/5
前へ
/41ページ
次へ
「ひどいですねぇ、あたしはいつもこの時間ですよ」  ふくれたように抗議するが、実際この時間には滅多に起きない。 「それで? 今日はなにを企んでいるのかな?」 「えへへー。バレました?」 「バレバレですよ」  どうせなにか変なものが欲しいとか言うんだろうと思いながら、寝巻きを着替える。 「あら、葉一さま、そんな人前で簡単に脱ぐのはいけません」 「なに言ってるの、いつものことじゃない。というかあなたは女性でしょう? 男性を前に着替えるなら言われてもいいけど」 「確かにそうですが、着替えるさいは『着替えるから少し外で待ってて』ぐらいは言いましょうよー」 「自宅で身内の女性にわざわざそんなこと言うの? それで、なにか欲しいものがあるんじゃないの?」 「ええ、そうなんですよ~♪ ・・・ってあれ? あたしなにか欲しいなんて言いました?」 「あなたの考えてることなんてすぐに分かるよ」 「えへへー、それがですねえ。猫を飼いたいなぁ・・・、なんて思ったりして」 「・・・猫?」 「はい! この猫です!」  どこからか出した雑誌に載っていた猫は、なるほど確かに可愛い。 「それで! どうでしょうか!?」 「えっ、なにが?」 「だ・か・ら! 飼ってもいいですか?」  まあ、今までに何かを飼ったこともないし、たまにはいいのかなぁ・・・。 「そうだね、金がしっかり世話するっていうのなら、飼ってもいいよ」 「本当ですか!?」 「ダメです」  いきなり、というかいつの間にか金の背後に立っていた男が却下した。 「うわぁ!」 「そんなこと言って、絶対に世話はしないんですから、見てるだけにしなさい」 「あら、白おはよう」 「おはようございます、葉一さま」  白と呼ばれるこの男は、金と共に葉一の世話をするのと、秘書のような補佐のようなこともこなす大変有能な男である。  切れ長の目に黒いショートヘア、銀縁のメガネがインテリの印象を深めている。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加