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「白は本当にやること早いね・・・」
「ですから、あなたは朝食を食べたら喫茶店のほうをお願いしますね」
「はーい!」
金は今にも踊りだしそうな勢いで飛び出していった。
「そしてフォローも完璧、と。相変わらずだね、白は」
「これも私の務めの内ですから。では猫の手配をしてきます」
「うん、よろしくね。私も後ですぐ喫茶店のほうに出るから」
「分かりました」
「ふんふんふ~ん」
鼻歌を歌いながら喫茶店の台所で仕込みをしているのは金だ。やる時はやるもので、喫茶店に来てから二十分で五十人分は作ってしまった。
ちょっと多すぎたかな・・・。まあいいか、多すぎたらあたしが食べればいいもんね。
金は見た目によらずかなり食べる。寿司屋へ行ったら一人で三十皿は余裕というほどだ。それなのに体重はもちろん、スタイルも変わらないという世の女性が羨む体質である。
「金、準備は出来た?」
ちょうど金が仕込みを終えた頃、朝食を終えた葉一が入ってきた。
「あ、葉一さま。はい、ちょうど仕込みが終わったところですよ」
「そう、ありがとう。白ももうすぐこっちに来ると思うからOPENにしようか」
「はーい」
喫茶店の入り口に掛けてあるCLOSEの札をOPENにひっくり返した。
「うー・・・ん! 今日もいい天気だなあ」
この喫茶葉月はN県のとある山の中腹に建っており、緑豊かで近場には湖もあるという好条件のためか、登山者やピクニックに来る人たちからも人気が高い。
「さてと、他の仕事もすぐ済ませちゃおっと」
やる気全開で店内に戻ろうとした時、一人の小さなお客さんがやってきた。
「このお店、まだ準備中ですか?」
長い黒髪にちょっと街までお出かけというようなオシャレな格好をした、小学五年生ぐらいの女の子だった。
「いらっしゃいませ。ちょうど開店したところですよ」
少しかがみ、笑顔で答えた。
「ここ、喫茶葉月ですよね」
「そうですよ」
女の子は安心したような笑みを浮かべた。
「お邪魔しますね」
「はーい。いらっしゃいませ、一名ご来店でーす」
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