2. 天才少女の悩み

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「今日はいつもより良い天気だし、お客さん多くなりそうな気がするんだよ。余ったら食べていいから」 「そうですか、分かりました」  金は少し戸惑いながらも仕込みをしに厨房へ向かった。 「それにしても、まさかあの方より早いお客様とは、驚きましたね」 「そうだね。いつもあの人が一番にお店に来るものだから、なんだかこういうのも新鮮かも」  噂をすればとばかりに、その常連はやってきた。 「いらっしゃいませ。おはようございます森重さん」 「おお、おはよう葉一。いつものを頼めるか」 「はい。コーヒーとサンドイッチ、それと朝刊ですね」  白髪をオールバックにしてサングラスをかけているこの森重という人は、この喫茶葉月が建っている山の管理人をしており、喫茶にはほぼ毎日顔を出してくれている常連だ。齢八十を超えているにも関わらずそこらの若者よりも若々しく筋肉もしっかりしている。 「おや、今日は珍しく先客がおったか」  カウンターに座ってから後ろの少女に気付いた。 「ええ、なんと開店と同時に来てくれました」  少女はさっきから携帯電話をかなり気にしているようだった。 「ん? あの校章、どこかで見たことがある」 「校章ですか?」 「あの子の肩に刺繍してあろうが」  言われてよく見ると、なるほど確かに。盾のような形の枠の中に一つ大きな星があり、その星から翼がはえているような・・・。いや、翼が星を包んでいるのか。 「この辺りの学校ですかね?」 「いや、あれは確かT都にある・・・。なんと言ったかの。全国的にも有名校だったはずじゃが・・・」 「聖星女学院の校章ですね」 「白知ってるの?」 「少し前に学院始まって以来の天才少女が現れたと話題になりましたから」 「おうそうじゃ、確か名前は―――」 「吉本早百合です」  いつの間にかカウンターのところまで来て、女の子は言った。 「学院創設以来の天才として、日本全国にその名が知れ渡りました」 「なるほど、話題になるはずだ」 「そして、その天才少女と言われる吉本早百合というのが私です」
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