慶応4年5月…

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頭上には浅葱色の空。 雲ひとつない晴天である。 五月、桜は葉桜となり新緑が太陽に照らされて眩しい。 近くの田んぼからか蛙の鳴き声がして、春を感じさせる。 春になったのに、私の体は病に蝕まれていく一方で、以前のように近藤先生のお役に立つことができない。 今の日本では労咳は不治の病と言われ、おそらく私はもうすぐ死ぬであろう。 以前、私がまだ戦場に立っていた時は常に死と隣合わせだった。 それを怖いと感じたことは多分一度だってなかった。 私にはあまり学問がないから、幕府がどうとか、将軍様がとか一般並の知識しかなかったし、攘夷や佐幕なんて正直どうでもよかった 私の心を動かすもの。 それは近藤先生。 全ては私を必要としてくれた先生の為に…
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