慶応4年5月…

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私は沖田家の長男として生まれた 少し歳の離れた姉二人。 両親は私が幼い頃に死んだ… 幼い私には沖田家を継ぐことができなかったため、姉が婿養子をもらい沖田家を継いだ。 なにもわからないまま私は、天然理心流の道場で生活することになった。待っていたのは兄弟子達からの激しい折檻。 絶えることのない生傷… 私は歯を食いしばり、涙を流さぬよう必死になって耐えた。 そこでの毎日はまるで地獄のようであった。 そんな私に手を差し伸べてくださったのが近藤先生だった。 私が隠れて泣いていたときには、見ろ?と大口を開け、何かと思えば拳を作りそのままその拳を口に入れてしまったのだ。 そのときの私は驚いて目を見開くことしかできなかった。 それから、兄弟子達からの折檻が無くなりはしなかったものの、隙あらば私を元気付けようとしてくれる近藤先生をみると少し心が軽くなった。 いつも私の側にいてくれた。 そんな近藤先生が一度だけなみだを見せたことがあった。 それは私の裸を見たとき… 兄弟子達の折檻により傷ついた体。至る所にある痛々しい生傷… 近藤先生はそんな私の体を抱きしめ、辛かったな、痛かったな、良く耐えたな、守ってやれなくてごめんなと、半刻程の間涙を流した。私の為に、私を想って。 そのとき、私は幼いながらも先生に一生ついて行こうと、何があっても先生だけは裏切らないと心に誓った。
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