99人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
鋼の鎧を纏う兵士達へ、篝火を灯す者はランタンを向ける。掲げたランタン越しに見える命はとてもか細く。まるで軽く吹けば消えるキャンドルの炎のようで。
剣盾鎧兜を装備していても、火炎の侵攻は止められない。
魂焼火炎、業火灼熱之哀。
ランタンを短く持ってトーチは腰を捻り、背筋を伸ばして予備動作。その姿勢を維持しつつ狙いを定めて目を細める。
本当に細く小さい灯火だ。これならばきっと、人差し指と親指で、摘んで消せるのだろう。
その小さな灯火達は我先にと押し寄せて来る。
無防備に攻めくる相手へと、トーチはランタンを振り回した。
同時にランタンが黄色く燃え、敵の盾にぶつかった瞬間、爆音と共に敵が消える。
敵兵が突っ込んでくるのを止め、仲間を探す。神隠し?空間転移の術?何れにせよ仲間はどうなったのか。
しかしそれはすぐに見つかった。
吹き飛ばされた敵兵は壁に張り付いていたのだが、四肢があらん方向に曲がっていた。
鎧は潰れ、変形した盾は砕け、兜は脱げていた。その様は巨大な怪物の悪戯。人間が小蝿を潰した様に酷似していた。
「ヒィッ!?」
一人が短く叫んだ瞬間、燃えた。
最初のコメントを投稿しよう!