ignis《種火》

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鋼の鎧を纏う兵士達へ、篝火(かがりび)を灯す者はランタンを向ける。掲げたランタン越しに見える命はとてもか細く。まるで軽く吹けば消えるキャンドルの炎のようで。 剣盾鎧兜を装備していても、火炎の侵攻は止められない。 魂焼火炎、業火灼熱之哀。 ランタンを短く持ってトーチは腰を捻り、背筋を伸ばして予備動作。その姿勢を維持しつつ狙いを定めて目を細める。 本当に細く小さい灯火だ。これならばきっと、人差し指と親指で、摘んで消せるのだろう。 その小さな灯火達は我先にと押し寄せて来る。 無防備に攻めくる相手へと、トーチはランタンを振り回した。 同時にランタンが黄色く燃え、敵の盾にぶつかった瞬間、爆音と共に敵が消える。 敵兵が突っ込んでくるのを止め、仲間を探す。神隠し?空間転移の術?何れにせよ仲間はどうなったのか。 しかしそれはすぐに見つかった。 吹き飛ばされた敵兵は壁に張り付いていたのだが、四肢があらん方向に曲がっていた。 鎧は潰れ、変形した盾は砕け、兜は脱げていた。その様は巨大な怪物の悪戯。人間が小蝿を潰した様に酷似していた。 「ヒィッ!?」 一人が短く叫んだ瞬間、燃えた。
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