ignis《種火》

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ignis《種火》

立ち塞がる敵を炎で燃やす。 灼熱と極寒の火焔が、荒廃した街の中で際限なく景色を彩る。 そのついでに命が燃え尽きるだけ。 記憶も肉体も感情も焼き尽くす。 どんなに水を欲しようと、もう遅い。 ランタンを振り回すだけで数多の命が宝石のように光り輝き、自らの餌となる。 焼かれる者は踊り狂い、時には寒さに震える。 ケロイドはもう見飽きた。 我、白骨を望む。 それが慈悲であり、黄泉の世界への道標。 終息を贈る、死の劫火。 看取る、淡い極彩色の火炎。 茫漠とするならば、蜃気楼が見えるならば、終着点はもう少し。 此方が命の行き先、出会った運命の終わり。 荒廃した深夜の街は祭事の如く、暗い光で彩られた。
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